
看護師のキャリアアップ方法は、認定看護師や専門看護師の資格取得が代表例です。しかし、それぞれの資格の違いや、自分に合った資格がわからず悩んでいる人が多くいます。この記事では、認定看護師と専門看護師の違いについて、役割や求められるスキル、仕事環境に分類して解説します。
記事を読めば、目標やライフプランに合ったキャリア選択が可能です。認定看護師と専門看護師は、求められる役割や専門性が異なります。自分に合った資格を知り、今後のキャリアアップに役立てましょう。
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認定看護師と専門看護師の基本的な違い

認定看護師と専門看護師の違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師の定義
- 専門看護師の定義
認定看護師の定義
認定看護師は、日本看護協会が認定する高度な知識と技術を持つ看護師です。認定看護師は、患者に対して高水準の看護を実践できる人材として、実践と指導、相談の3つの役割を担うのが特徴です。熟練した看護技術と知識を用いて高水準の看護を実施し、看護スタッフに対して専門的に指導を行います。
相談とは、患者や他の医療従事者からの問いかけや助言要請に対応する役割を指します。2019年の法改正により、要件を満たすと特定認定看護師として活動できるようになりました。法改正が行われたことで、より高度な医療行為に対応できる看護師の育成が進んでいます。
専門看護師の定義
専門看護師は、日本看護協会が認定する高度な看護実践能力を持つ看護師のことです。専門看護師は、知識と技術を活かして、解決が困難な健康問題を抱える患者や家族に質の高い看護ケアを提供します。専門看護師の役割は、以下のとおりです。
役割 | 内容 |
実践 | 科学的根拠にもとづいた看護を提供する |
相談 | 他の医療スタッフへ専門的なアドバイスをする |
調整 | 患者を中心としたケアの連携を図る |
倫理調整 | 医療現場での倫理的課題の解決に取り組む |
教育 | 看護スタッフの能力の向上を支援する |
研究 | 研究活動を通して看護の質を高める |
専門看護師は医療施設内だけでなく、医療システム全体でリーダーシップを発揮することが求められます。専門看護師は看護実践のモデルとなり、新しいケアの開発や普及に貢献しているのが特徴です。
認定看護師と専門看護師の役割の違い

認定看護師と専門看護師の役割の違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師に求められる役割
- 専門看護師に求められる役割
認定看護師に求められる役割
認定看護師は特定の看護分野におけるスペシャリストとして、現場で看護ケアを提供するのが主な役割です。認定看護師が求められる理由は、医療の高度化や専門化が進む中で、分野に特化した知識と技術を持つ看護師が必要なためです。
認定看護師は高度な看護を提供するだけでなく、スタッフの指導や患者からの相談に対応します。認定看護師は、現場で標準的なケアを確立し、スタッフのスキルアップをサポートすることでチーム全体の能力を底上げします。認定看護師は日々のケアで得た経験を体系化し、最新の知識や技術を積極的に現場へ還元するのも重要です。
特定分野でのリーダー的存在として現場を支えるのが、認定看護師の大切な役割です。
専門看護師に求められる役割
専門看護師は高度な知識と広い視野を持ち、看護の実践だけでなくチームや組織全体をリードする役割を担います。専門看護師は、さまざまな医療職種間の連携をサポートする必要があります。看護スタッフの能力向上のための活動や、最新のエビデンスを実践に取り入れて研究活動を推進するのも重要です。
組織全体の看護の質向上に貢献するマネジメント力や、より良い医療や看護を実現するための政策提言も求められます。専門看護師は、組織や社会全体の医療や看護の発展に影響を与える存在です。
認定看護師と専門看護師の求められるスキルの違い

認定看護師と専門看護師のスキルの違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師に求められるスキル
- 専門看護師に求められるスキル
認定看護師に求められるスキル
認定看護師には、特定の看護分野における技術と知識が求められます。認定看護師に必要なスキルは実践力と指導力、問題解決能力です。特定領域の課題に対する解決力が求められます。認定看護師には、患者や家族への適切な指導力も必要です。
認定看護師は、患者や家族に対して複雑な医療情報をわかりやすく伝え、自己管理能力の向上をサポートすることが大切です。最新の医療知識やエビデンスを収集し、分析する能力も求められます。倫理的判断力と患者擁護の姿勢も、認定看護師に欠かせません。
認定看護師は患者の権利を守りながら、最善のケアを提供するための判断力が必要です。
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専門看護師に求められるスキル
専門看護師は、高度な臨床での判断力や、複雑な症例を的確に分析して最適なケアを選ぶ力が求められます。医師や他の医療従事者に専門的な助言をする、コンサルテーション能力も必要です。現場の倫理課題を解決する力や、看護師や患者への教育を支援するスキルも重要です。
専門看護師はチームワークやリーダーシップ、医療システムの改善スキルなども求められます。
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認定看護師と専門看護師の特定分野の違い

認定看護師と専門看護師の特定分野の違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師の特定分野
- 専門看護師の特定分野
認定看護師の特定分野
高齢化社会や疾病構造の変化に伴い、日本看護協会では専門的なケアが必要とされる領域を特定分野と設定しています。認定看護師の特定分野は、以下の22分野です。
- 皮膚・排泄ケア
- 集中ケア
- 緩和ケア
- 感染管理
- 糖尿病看護
- 不妊症看護
- 救急看護
- 訪問看護
- 認知症看護
- 摂食嚥下障害看護
- 脳卒中リハビリテーション看護
- がん化学療法看護
- 乳がん看護
- 手術看護
- 慢性呼吸器疾患看護
- 慢性心不全看護
- がん放射線療法看護
- 新生児集中ケア
- 透析看護
- 地域看護
- 精神科看護
- 小児プライマリケア看護
認定看護師は自分の興味や適性に合った分野を選択し、各分野のスペシャリストとして専門性を高めます。しかし、認定看護師の仕事は、各分野での患者や家族へのケアだけではありません。同僚の看護師への指導や相談対応など、チーム医療の質の向上にも貢献が必要です。
専門看護師の特定分野
専門看護師の特定分野は高齢化や医療の高度化、在宅医療の推進など、現代の医療課題に対応するために設けられました。専門看護師はそれぞれの特定分野において、より複雑な健康問題を持つ患者や家族に対して看護ケアを提供します。専門看護師の特定分野は、以下の14分野です。
- がん看護
- 精神看護
- 地域看護
- 老人看護
- 小児看護
- 母性看護
- 慢性疾患看護
- クリティカルケア看護
- 感染症看護
- 家族支援
- 在宅看護
- 遺伝看護
- 災害看護
- 放射線看護
専門看護師は分野ごとに独自の専門性を持ちながら、他分野と連携して患者のQOLの向上に貢献します。自分の興味や強みに合わせて分野を選択できるため、看護師としてのキャリアをより深められます。
認定看護師と専門看護師の仕事環境の違い

認定看護師と専門看護師の仕事環境の違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師の働く場
- 専門看護師の働く場
認定看護師の働く場
認定看護師は、専門性を活かせる職場が多岐にわたるため、自分のスキルや志向に合った環境で働くことが可能です。認定看護師の主な働く場所は、一般病院や大学病院、地域医療支援病院などが代表的な職場です。訪問看護ステーションや介護施設、在宅ケア支援センター、地域包括支援センター、保健所などで活躍する人もいます。
感染対策チーム(ICT)や、褥瘡対策チームなどの専門チームで専門性を発揮することもあります。緩和ケア病棟や災害医療現場などの特殊な環境も、認定看護師の技術と知識が必要です。最近では看護学校や研修施設で指導に携わったり、医療機器メーカーの臨床アドバイザーとして働いたりする人も増えています。
認定看護師の知識とスキルはさまざまな場面で求められており、キャリアの選択肢が広がっています。
専門看護師の働く場
専門看護師は専門的な知識と技術を持つ看護師として、高度な医療が提供される場所で重要な役割を担います。専門看護師が働く場所として大学病院や高度専門医療施設、がん診療連携拠点病院、救命救急センターなどがあります。
総合周産期母子医療センターや精神科専門病院、訪問看護ステーションなどで高度な専門性を活かして活動する人も増加傾向です。臨床現場だけでなく大学や研究機関、医療政策関連部署、国際保健機関(WHOやJICA)などでも重要な役割を担います。
専門看護師は高度な専門知識を活かして複雑な医療ニーズに対応できるため、さまざまな分野で必要とされています。活躍の場は国内だけでなく、国際的な保健医療の現場にまで広がっているのが大きな魅力です。
認定看護師と専門看護師の資格取得方法の違い

認定看護師と専門看護師の資格取得方法の違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師の資格取得方法
- 専門看護師の資格取得方法
認定看護師の資格取得方法
認定看護師の資格を取得するためには、通算5年以上の実務経験(うち3年以上は特定分野)が必要です。認定看護師を目指す場合は、実務経験後に日本看護協会認定の教育機関で6か月以上(615時間)の研修を修了し、認定審査に合格する必要があります。
認定看護師の教育課程の受講料は約80~100万円が一般的ですが、職場で補助制度が用意されている場合もあります。2020年度からは従来の教育制度(A課程)に加え、特定行為研修を組み込んだ新たな教育制度(B課程)も始まりました。
B課程は研修期間が約1年(1,015時間)とA課程より長くなりますが、修了すると特定行為を実施できる点がメリットです。最近ではオンライン授業と実習を組み合わせたカリキュラムも増え、働きながら資格を取得する環境が整っています。
認定看護師の資格は5年ごとに更新が必要で、更新時は実践時間や研修受講などの条件を満たす必要があります。
専門看護師の資格取得方法
専門看護師の資格を取得するためには、看護師免許の取得後に通算5年以上(うち3年以上は専門分野)の実務経験が必要です。実務経験を積んだ後に日本看護系大学協議会が認定する修士課程(38単位以上)を修了し、認定審査を受けます。認定審査は書類審査や筆記試験、面接試験が行われます。
しっかりと準備をすれば、専門看護師の資格の合格率は約70~80%程度です。資格取得に必要な費用は、受験料が50,000円程度です。専門看護師の資格は5年ごとに更新が必要で、更新料として30,000円程度かかります。更新時には所定の研修の受講や実践活動の実績が求められるため、継続的な学習が必須です。
認定看護師と専門看護師の資格取得難易度の違い

認定看護師と専門看護師の資格取得難易度の違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師の資格取得難易度
- 専門看護師の資格取得難易度
認定看護師の資格取得難易度
認定看護師は、専門看護師と比べると取得しやすい資格です。合格率は約90%と高く、実務経験を積んだ看護師なら十分に挑戦できます。認定看護師の試験で最も重視されるのは、臨床での看護の実践能力です。理論だけでなく、実際の看護現場で専門的なケアを提供できる能力が問われます。
認定看護師の資格取得の難易度は決して高くありませんが、計画的に準備を進めましょう。職場の理解を得ながら勉強に取り組めば、十分に取得可能な資格です。
専門看護師の資格取得難易度
専門看護師は、認定看護師と比較してかなり難易度が高い資格です。大学院修士課程で38単位以上を修了する必要があるため、学術的な知識と研究能力が求められます。専門看護師の資格取得は、経済的な負担が大きい点も特徴です。専門看護師の資格取得には、大学院の学費を含めて200〜300万円程度の費用がかかります。
専門看護師の資格取得にかかる費用は、長期的なキャリアへの投資と考える必要があります。専門看護師の資格は、高度な専門性と研究能力を証明できます。資格取得の難易度は高いですが、価値に見合った内容です。
認定看護師と専門看護師のキャリアパスの違い

認定看護師と専門看護師のキャリアパスの違いについて、以下の内容を解説します。
- 認定看護師のキャリアパス
- 専門看護師のキャリアパス
認定看護師のキャリアパス
認定看護師の資格を取得すると、多様なキャリアパスが広がります。臨床現場でスペシャリストとして経験を積んだ後は、多くの人が教育者や管理職の道へ進みます。専門知識を持つ看護師として社会的な評価も高いことが特徴です。
認定看護師としての経験は、研究活動の推進や国際的な医療支援活動など、幅広い分野での活躍につながります。自分の強みや興味を見極めながら、長期的なビジョンを持ってキャリアプランを考えましょう。
専門看護師のキャリアパス
専門看護師のキャリアパスは臨床の最前線だけでなく、教育や研究、組織運営など多岐にわたります。臨床現場では臨床研究のリーダーとしての活躍が期待され、病院の看護部長などの経営管理職へ昇進する人もいます。
専門看護師は、大学教員や医療政策アドバイザー、国際機関での活動などの道も開かれており、社会的影響力を持つ仕事を担える点が魅力です。専門看護師の中には博士課程に進学し、学術研究の分野でキャリアを積む人もいます。医師と連携して高度な看護を実践したり、専門クリニックを開業したりするケースもあります。
まとめ

認定看護師と専門看護師はどちらも看護の質の向上に貢献する資格ですが、役割や取得方法に違いがあります。認定看護師は実践的な技術に特化し、特定領域でのケアと技術の指導が主な役割です。専門看護師は包括的な看護の実践に加え、研究やコンサルテーション、組織全体の医療改善を担います。
取得条件も異なり、認定看護師は実務経験5年以上と6か月以上の教育課程修了が必要です。専門看護師は修士課程修了と特定領域での3年以上の経験が必要です。認定看護師から専門看護師へのステップアップも可能ですが、大学院への進学が必要なので慎重に検討してください。
看護師としてのキャリアを考えるときは、目指す方向性に合わせて資格を選びましょう。