- 介護施設の看護師って、実際どんな仕事をしているの?
- 病院より介護施設は働きやすいのかな…?
- キャリアやお給料って、どうなるんだろう?
病院でのハードな勤務に疲れ、介護施設への転職を考えていませんか?しかし、介護施設での仕事内容や待遇の実態がわからず、一歩が踏み出せない看護師の方も多いのではないでしょうか。
この記事では介護施設で働く看護師の役割や1日の流れ、働く施設の種類から求められる能力まで詳しく解説します。
記事を読めば、介護施設で働く看護師の働きやすさややりがい、給与面やスキルアップの難しさなどが明確になります。介護施設での看護師の役割は、病院とは異なり利用者の生活に寄り添った健康管理が中心です。メリットとデメリットを理解したうえで介護施設への転職を検討しましょう。
介護施設で働く看護師の役割

介護施設で働く看護師は病院と違い、治療よりも利用者の「その人らしい暮らし」を継続できるよう健康管理や生活サポートを行います。介護施設での看護師の業務は以下のとおりです。
- 利用者の健康管理や生活のサポート
- 一部の医療行為
利用者の健康管理や生活のサポート
介護施設で働く看護師の役割は、利用者の健康状態を見守り、安全で安心できる生活を支えることです。介護施設で働く看護師の業務は以下のとおりです。
- 服薬管理
- 褥瘡(じょくそう)ケア
- 生活介助と健康チェック
- 口腔ケア
- 看取り(ターミナルケア)
介護施設で働く看護師は医療的な知識と視点を持ちながら、利用者の生活全般に関わるきめ細やかなケアを行います。
一部の医療行為
介護施設の看護師は医師の指示にもとづき、利用者の健康を守るための医療行為も行います。多くの介護施設には医師が常駐していないため、看護師が日々の健康状態を観察し、必要に応じて処置を判断する場面もあります。
介護施設で看護師が行う医療行為は以下のとおりです。
- バイタルサイン測定
- 服薬管理
- 褥瘡や創傷の処置
- 喀痰(かくたん)吸引
- 経管栄養(胃ろうなど)の管理
- インスリン注射、血糖測定
- 点滴、採血
- ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のケア
- 導尿、バルーンカテーテルの管理
介護施設では看護師が観察・判断・処置を担うことで、利用者の体調の悪化や緊急事態を防ぎ、安心して生活できる環境を守ります。
介護施設で働く看護師の1日

介護施設で働く看護師は、利用者の生活リズムに合わせた業務を行います。介護施設で働く看護師の1日の流れは以下のとおりです。
- 申し送り
- バイタルチェック
- 医療ケア
- 服薬管理
- 食事の見守り
- 記録・報告
介護施設では看護師が介護職員やリハビリスタッフと連携し、医療面から利用者が安心して穏やかに過ごせるよう支えます。
看護師が働く主な介護施設6選

看護師が活躍できる介護施設にはさまざまな種類があります。介護施設ごとに特徴や看護師に求められる役割が異なるため、自分の働き方やキャリアプランに合った職場を選びましょう。
看護師が活躍できる介護施設の種類は以下のとおりです。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- デイサービス
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は、地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的な施設です。特養には原則として要介護3以上の比較的介護度が高い人が入居します。特養は看取りまで行う「終の棲家」としての役割を担っており、看護師には長期的な健康サポートが求められます。
特養の看護師の主な業務は以下のとおりです。
- バイタルチェック
- 服薬管理
- 褥瘡の処置
特養は医師が常駐していない施設が多いため、緊急時には看護師の冷静な判断と介護職員との連携が欠かせません。多くの特養ではオンコール体制があり、夜間や休日でも必要に応じて看護師が対応します。
介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)は利用者が自宅での生活に戻ることを目的とし、リハビリに重点を置いた施設です。老健は病院と一般的な介護施設の中間に位置づけられ、利用者の在宅復帰を目的としています。老健の看護師は病院での臨床経験を活かしながら、利用者の健康管理と回復支援を行います。
老健は医療的ケアが必要な利用者も多く、看護師としての専門性が求められる職場です。老健の看護師は日々の健康チェックと以下の医療的ケアを必要に応じて行います。
- 点滴の管理
- 経管栄養
- 喀痰(かくたん)吸引
入所期間は原則3~6か月と短く、利用者の入れ替わりが早い点が老健の特徴です。老健には医師が常勤しているため、急な容体変化にも迅速に対応できます。看護師が老健で働く際には、理学療法士や作業療法士など他の専門職とのチームワークも重要です。
有料老人ホーム
有料老人ホームは民間企業が運営する介護施設です。設備やサービス内容が有料老人ホームの施設ごとに異なるため、看護師の働き方もさまざまです。有料老人ホームは入居者の介護度や健康状態に合わせて、以下の3種類に分けられます。
- 介護付有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
有料老人ホームでの看護師の主な業務は、バイタルチェックや服薬管理、褥瘡ケアなどの健康管理です。病院と比べて有料老人ホームでは、看護師の医療行為の頻度は少ない傾向にあります。有料老人ホームでは看取りを行う施設も多く、看護師として利用者の人生の最期に深く関わるやりがいのある職場です。
一部の有料老人ホームはホテルのように豪華で、看護師には質の高い接遇やコミュニケーション能力が求められます。緊急時に備えて看護師がオンコール対応を行う場合も多く、有料老人ホームでは冷静な判断力が必要とされます。
サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、自立度の高い高齢者が暮らすバリアフリー設計の賃貸住宅です。看護師の業務は入居者の健康管理や生活相談が中心で、病院や他の介護施設に比べてサ高住は身体的負担が軽い傾向があります。
サ高住の入居者に介護が必要になった場合は、外部サービスを利用することが一般的です。サ高住で働く看護師は入居者の日々の健康状態を見守り、緊急時に対応します。日勤のみで夜勤がない施設も多く、サ高住は看護師のワークライフバランスを保ちやすい職場です。
サ高住での看護師の業務は以下のとおりです。
- バイタルチェック
- 服薬管理
- 健康相談
- インスリン注射や褥瘡の処置などの簡易的な医療行為
サ高住では医療行為が少ない分、一人ひとりの入居者と向き合い、小さな変化に気づく観察力が看護師には求められます。
グループホーム
グループホームでは認知症の高齢者が少人数のユニットで共同生活を送ります。グループホームで働く看護師の役割は、高度な医療行為よりも健康管理や精神的サポートを行い、グループホーム利用者の生活を支えることです。
グループホームでの看護師の主な業務は以下のとおりです。
- バイタルチェック
- 服薬管理
- 認知症の症状に応じたケア
グループホームでは看護師の配置が義務付けられていないため、介護職員が医療ケアを行う施設もあります。医療依存度の高い利用者は少なく、看取りを実施しないグループホームも多い傾向です。
デイサービス
デイサービスは、自宅で暮らす高齢者が日帰りで利用する通所型施設です。看護師は日勤のみで残業が少なく、夕方には業務が終わるため家庭と仕事を両立しやすい点がデイサービスの特徴です。土日や祝日が休みとなるデイサービスの施設も多く、安定した生活リズムを保てます。
デイサービスでは医療的ケアが必要な場面は少なく、ブランクから復職する看護師にもおすすめです。デイサービスでの看護師の業務は以下のとおりです。
- バイタルチェック、服薬管理、健康相談
- 皮膚の状態確認、軟膏塗布
- インスリン注射、褥瘡の処置
- レクリエーションや機能訓練の補助
デイサービス施設では医師が常駐していないため、看護師には利用者の急な体調変化への冷静な判断が求められます。
介護施設で働く看護師に必要な3つの能力

介護施設で働く看護師は、病院とは異なる環境で利用者の生活と健康を支えます。介護施設では利用者の病状の変化に気づく観察力や、他職種と連携してケアを進める協調性が看護師には求められます。
介護施設で働く看護師に必要な3つの能力は以下のとおりです。
- 基本的な医療知識
- 緊急時に対応する力
- コミュニケーション能力
基本的な医療知識
介護施設で働く看護師には、高齢者ケアに特化した基本的な医療知識が必要です。介護施設利用者の多くは高齢で、加齢に伴う病気や健康上の問題を抱えている場合があります。介護施設で働く看護師の業務で必要となる基本的な医療知識は以下のとおりです。
- 慢性疾患の管理
- 皮膚トラブルのケア
- 感染症の予防・対応
- 認知症ケア
- 日常的な医療ケア
- 急変時の対応
- 服薬管理
- 看取り
介護施設では看護師の幅広い知識が、利用者の日々の生活を支えています。
緊急時に対応する力

介護施設で働く看護師には、利用者の急な体調変化に迅速かつ的確に対応する力が欠かせません。介護施設では多くの利用者は高齢で持病を抱えている場合が多く、予測できない事態が発生する環境にあります。病院のように医師が常駐していない介護施設も多いため、看護師の判断と行動が利用者の命に直結します。
介護施設で働く看護師に求められる緊急時に対応できる能力は以下のとおりです。
- 状態を評価する力
- 優先順位を判断する力
- 応急処置を行う力
- チームに指示する力
- 精神的に安定して行動する力
緊急時に対応できる看護師の能力は、介護施設利用者の安全と命を守るためには不可欠です。
コミュニケーション能力
介護施設の看護師には利用者と家族、他の職員と円滑な関係を築くためのコミュニケーション能力が求められます。病院とは異なり、介護施設で働く看護師は利用者の生活そのものに深く関わるため、日々の会話やふれあいを通じて信頼関係を築くことが必要です。
介護施設で働く看護師に求められるコミュニケーション能力は以下のとおりです。
- 利用者の心に寄り添い、信頼関係を築く力
- 表情や仕草から体調の変化を読み取る力
- 利用者の家族の不安に寄り添い、状況をわかりやすく説明する力
- 介護職員やケアマネージャーなど他職種と円滑に連携する力
- 医療知識を他の職員にわかりやすく伝える力
利用者だけでなく家族や周囲のスタッフとも良好な関係を築くことが、介護施設での看護師の役割となります。
介護施設で働く看護師の2つのメリット

介護施設では勤務時間や働き方の柔軟さ、体力的な負担の軽減により、看護師として長期的なキャリア継続が可能です。看護師が介護施設で働く2つのメリットを解説します。
- 残業や夜勤が少ない
- 体力的な負担が少ない
残業や夜勤が少ない
介護施設の看護師としての勤務は病院と比べて残業や夜勤が少ないため、仕事とプライベートの時間を分けたい方におすすめです。介護施設の利用者は比較的容体が安定しており、急な対応が発生しにくいことが看護師の残業や夜勤が少ない理由です。
病院のように急患の受け入れや緊急手術などの突発的な看護師の業務がないため、介護施設では1日のスケジュールを計画どおりに進められます。介護施設で働く看護師の残業や夜勤の勤務形態における特徴は以下のとおりです。
- デイサービスなど夜勤がない施設も多い
- 夜勤があっても病院より回数が少ない
- 夜勤は施設内待機ではなく、電話対応のみのオンコール体制が多い
介護施設で働く看護師は終業時間が読みやすく、仕事の後にプライベートの予定を入れることも可能です。
» 看護師の残業が多い理由と定時に帰る方法を紹介
体力的な負担が少ない
看護師が介護施設で勤務する場合、病院勤務に比べて体力的な負担が少ない点が大きなメリットです。介護施設で働く看護師の体力的な負担が少ない理由は以下のとおりです。
- 急な対応が少ない
- 力仕事は介護職員が担当する
- 緊急入院や手術の対応がない
- 座って業務を行う機会が多い
体力を必要としない介護施設での環境では、体力に自信がない看護師でも安心して働けます。
介護施設で働く看護師の3つのデメリット

看護師が介護施設への転職を考える際は、病院と比べたデメリットも把握しておきましょう。看護師が介護施設で働く場合、以下のデメリットがあります。
- 給与が低い
- 看護師としてのスキルアップが難しい
- 利用者との意思疎通が難しい
給与が低い
介護施設で働く看護師は、病院勤務より給与が低くなる傾向があります。介護施設で看護師の給与が低くなる理由は以下のとおりです。
- 夜勤・残業手当が少ない
- 専門スキル手当がない
- 収益構造が違う
- 賞与(ボーナス)が少ない
- オンコール手当が低い
介護施設は看護師として働きやすい環境ですが、勤務条件や施設の方針によって給与水準が左右されます。給与を重視する場合は、事前に介護施設の給与体系を確認しておきましょう。
» 看護師の平均年収を徹底解説!
看護師としてのスキルアップが難しい

介護施設は病院とは役割が異なるため、看護師としてのスキルアップが難しい場合があります。介護施設で看護師としてのスキルアップが難しい理由は以下のとおりです。
- 点滴や採血などの医療行為の機会が少ないため技術が鈍る
- 最新の医療知識や治療法に触れる機会が減る
- 病院のような体系的な研修や勉強会の機会が限られる
- 看護師の配置人数が少ないため知識共有の場が限られる
- 専門・認定看護師などの明確なキャリアパスを描きにくくなる
介護施設では日々の業務や学習環境が限られるため、専門性を高めたい看護師には物足りなさを感じる場合があります。
利用者との意思疎通が難しい
介護施設で働く看護師は利用者との意思疎通がうまくいかず、精神的な負担を感じることがあります。病気や加齢の影響で、介護施設の利用者は自分の気持ちや体調を言葉でうまく表現できない場合が多いためです。看護師が介護施設の利用者との意思疎通が難しいと感じる場面は以下のとおりです。
- 痛みや苦しさをうまく訴えられない利用者の状態を正確に把握できない
- ケアの目的を理解されずに入浴や服薬を拒否される
- 認知症による不安や混乱から、予期せず厳しい言葉をかけられたり手を出されたりする
利用者の思いを汲み取れないことや意図が伝わらない状況は、介護施設で働く看護師にとって精神的ストレスになります。
介護施設で働く看護師のリアルを知ろう

介護施設で働く看護師の役割は病院勤務とは異なり、利用者の生活に深く関わることです。介護施設での看護師の業務は治療よりも日常生活のサポートが中心で、介護職員と連携しながら利用者の健康を支えます。
勤務する介護施設によっては、看護師が医療判断を1人で行うプレッシャーや介護業務の補助などの負担を感じる場面もあります。しかし、介護施設利用者との長期的な関わりから生まれる信頼関係に、看護師としての大きなやりがいを感じることが可能です。介護施設は看護師にとって利用者の人生に寄り添う看護を実践できる職場と言えます。