- 毎日の残業でプライベートの時間がまったくない
- 残業が少ない看護師の職場なんて本当にあるの?
- 今の働き方を続けることは、体力的に限界かも…
看護師はやりがいのある仕事ですが、終わらない残業で心身が疲弊していませんか?若い年代は残業による疲労から回復しやすいものの、年齢を重ねると回復までに時間がかかりやすくなります。育児や介護なども忙しい中で残業が続くと、体調を崩して看護師を続けられなくなるかもしれません。
この記事では看護師の残業の実態と原因をふまえ、残業を減らすための具体的な対策を詳しく解説します。記事を読めば現状の働き方を改善でき、ワークライフバランスを取りやすくなります。
日々の業務や職場の制度、仕組みを見直して残業を減らせないか検討しましょう。今の職場で残業を減らすことが難しい場合は残業の少ない看護師の職場への異動や転職も有効な選択肢です。
看護師の残業の実態

看護師の勤務形態ごとの残業時間や残業が多い配属先を以下にまとめました。
日本看護協会の調査によると、約3割の看護師は「ほとんど残業なし」と回答する一方、同じく約3割は月20時間以上の残業をしています。看護師は勤務形態や配属部署によって残業時間に大きな差が生じやすいと言えます。
看護師の勤務形態ごとの残業時間
看護師の残業時間は常勤やパート、派遣などの働き方によって異なります。勤務形態によって仕事の範囲や責任、勤務時間の決まりが違うため、看護師の残業時間にも差が生じます。
看護師の勤務形態ごとの残業時間は以下のとおりです。
| 勤務形態 | 1か月当たりの残業時間 |
| 常勤(正規職員) | 15時間 |
| 夜勤専従 | 5時間 |
| 日勤常勤(外来・クリニック) | 5時間 |
| パート・アルバイト | 5時間 |
| 派遣看護師 | ほとんどなし |
患者さんの入れ替わりが多い急性期病棟などで働く常勤の看護師の場合、残業時間が15時間を大幅に上回ることも珍しくありません。夜勤専従の看護師は1回の勤務時間は長いものの、日中の会議や委員会活動への参加がないため、残業時間は少ない傾向です。
患者さんの急な容体変化がない外来・クリニックで働く日勤常勤の看護師は、残業が少なめです。パート・アルバイトや派遣看護師は契約した時間内で働くため、残業時間はほとんど発生しません。
» 看護師の仕事内容|勤務先や給与もまとめてチェック!
看護師の残業が多い診療科や部署
緊急性が高いもしくは重症の患者さんが多い診療科や部署は、看護師の残業が多い傾向があります。看護師の残業が多い診療科や部署は以下のとおりです。
| 看護師の残業が多い診療科や部署 | 対応内容 |
| 救急外来やER | 患者さんの急な変化や緊急搬送 |
| 手術室 | 緊急手術や長時間にわたる手術 |
| 集中治療室(ICU) | 命に関わる状態の患者さんの対応 |
| 外科病棟(特に脳神経外科、心臓血管外科) | 手術後の患者さんの管理や急な容体変化への対応 緊急入院 |
| 産婦人科病棟 | 緊急の帝王切開 |
| 循環器内科病棟 | 一刻を争う緊急の入院やカテーテル治療 |
命に関わる診療科や部署はスケジュールが読みづらく、看護師の残業が発生しやすい傾向があります。
» 看護師の働き方を職場や雇用形態別に徹底解説!
看護師の残業が多い理由5選

看護師の残業が多い理由は以下のとおりです。
- 慢性的に看護師が不足している
- 患者の急変や即日入院の対応が多い
- 交代勤務は勤務時間の前後で対応が多い
- 看護記録や事務作業の負担が重い
- 勤務時間外の研修や会議が多い
慢性的に看護師が不足している
高齢化によって医療の需要は増え続けていますが、看護師の数が追いついていません。看護師は労働環境が厳しく、不規則な勤務も多いため、離職者も増加しています。
勤務先で急に看護師が離職しても、代わりの看護師をすぐに見つけることは困難です。勤務先で看護師が離職すると、1人当たりの業務量や残業が増える悪循環に陥ります。
患者の急変や即日入院の対応が多い

患者さんの命に関わる職場の看護師は残業が多い傾向があります。看護師の残業につながる突発的な業務は以下のとおりです。
- 患者さんの容体が急変したときの対応
- 緊急入院の対応
- 家族への状況説明
- 予期せぬ処置・検査
- 看護記録の作成
患者さんの命に関わる場合、看護師は他の業務を中断して最優先で対応する必要があります。看護師は患者さんに合わせた臨機応変な対応が求められるため、残業は避けられません。
交代勤務は勤務時間の前後で対応が多い
看護師の交代勤務は勤務時間の前後で時間外労働が発生しやすい働き方です。看護師の交代勤務で残業が必要な状況は以下のとおりです。
- 次の勤務者への申し送りが長引く
- 勤務交代の直前に患者さんの容体が急変する
- 看護記録を残業で作成する
- 次のシフトのスタッフのために物品を補充する
- 始業前に出勤して情報収集する必要がある
- 残業している他のスタッフをサポートする
看護師の交代勤務では自分の業務が終わっても残業せざるを得ない場面が多くあります。
看護記録や事務作業の負担が重い

看護師は患者さんのケア以外にも多くのデスクワークを担当します。日中は患者さんの対応がメインのため、看護師は勤務時間が終わってからまとめて記録を作成することが多く、残業が発生してしまいます。
看護師が作成する記録や書類は以下のとおりです。
- 電子カルテ(日々の記録)
- サマリーや看護計画書
- カンファレンス資料
- インシデントレポート
他のスタッフにも状況が正確に伝わるよう、記録や書類には詳細な内容の記載が必要です。記録や書類の文章構成を考える工程に時間がかかる点も看護師の残業が増える要因です。
勤務時間外の研修や会議が多い
看護師は常に新しい知識や技術を学ぶ必要があり、病院内での情報共有も欠かせません。看護師の日中は患者さんの対応で忙しいため、研修や会議が勤務時間外に設定される傾向があります。
看護師が参加する研修や会議は以下のとおりです。
- キャリアアップに欠かせない院内研修
- 部署の会議
- 安全対策や感染対策などの委員会活動
- 新しい医薬品や医療機器の勉強会
- 休日を利用して参加する学会や院外研修
研修や会議は自己研さんやスキルアップが目的ですが、強制的に参加を求められる場合は看護師の残業時間が増える場合もあります。
看護師が残業を減らして定時に帰る方法2選

看護師が残業を減らして定時に帰る方法は以下のとおりです。
- 日々の業務の無駄な作業を減らす
- 職場で制度や仕組みを見直す
日々の業務の無駄な作業を減らす
日々の業務の進め方を見直すと残業を減らせる可能性があります。仕事の段取りなどで無駄な作業はないか見直してみましょう。
看護師個人で効率化できる工夫は以下のとおりです。
- 始業前に作業内容をリスト化して考える時間を減らす
- 即時記録を習慣化する
- スキマ時間を活用する
- 文書のテンプレートを準備する
- 情報共有を徹底する
- 整理整頓してモノを探す時間を減らす
- 日々の目標を明確にして行動する
すべての作業を一度に効率化することは困難ですが、取り組みやすい内容から始めてみましょう。
職場で制度や仕組みを見直す
看護師個人だけで業務効率化しづらい問題は職場全体で取り組むことをおすすめします。看護師の残業を減らすために職場でできる工夫は以下のとおりです。
- 看護補助者の増員
- ICTツール(※1)の導入
- 研修・委員会の業務時間内実施
- 勤務間インターバル(休憩)制度の導入
- PNS®︎(パートナーシップ・ナーシング・システム)(※2)の導入
- 管理職による定時退勤の率先
- 勤怠管理システムの導入
- 業務改善提案制度の設置
看護師の残業を減らすためには看護師個人の工夫に加えて、職場全体で制度や仕組みの整理が必要です。
※1 ICTツールとは、情報通信技術を活用して情報の収集・共有・分析・管理などを行うための道具やサービスです。
※2 PNS®︎とは、2人1組の看護師で協力しながら患者さんを看護する体制です。
職場の残業が減らないなら異動や転職を検討しよう

職場の業務効率化を進めても残業時間が減らない場合、緊急対応が少ない診療科や部署に異動もしくは転職する方法もあります。突発的な残業が発生しにくい看護師の職場の特徴は以下のとおりです。
- 夜勤がない勤務体制
- 予約制の診療や手術が中心
- 患者さんの容体が安定している職場
残業が少なくて看護師の資格や経験を生かせる診療科や部署は以下のとおりです。
| 残業が少ない診療科や部署 | 特徴 |
| 眼科 | 予定手術が中心 |
| 皮膚科 | 外来での診療が中心で患者さんの容体が安定 |
| 耳鼻咽喉科 | 予約制の検査や手術が中心 |
| 精神科(慢性期病棟) | 患者さんの容体が安定 |
| リハビリテーション科 | スケジュールに沿ったケアが中心 |
| 健診センター・人間ドック | 完全予約制 |
| 透析クリニック | クールごとに治療時間を設定 |
| 採血室 | 担当業務が限定的 |
| 手術室(予定手術中心の施設) | 緊急手術なし |
看護師として働きつつプライベートの時間も確保したい方は、残業が少ない診療科や部署への異動や転職を検討しましょう。
転職するなら残業の少ない看護師求人を見極めよう

転職で残業が少ない職場に転職するなら、無料で利用できる転職サイトやエージェントを上手に使いましょう。転職先の情報確認を怠ると「こんなはずではなかった」と後悔する可能性があります。
転職サイトを利用する場合、以下のような方法で残業が少ない看護師求人を見つけましょう。
- 検索機能で残業に関する項目を絞り込む
- 平均残業時間を確認する
- 病院以外の職場の求人票も確認する
- 予約制の診療科かどうか確認する
- 離職率が高くないか確認する
- みなし残業代の記載の有無を確認する
みなし残業代に関する記載がある職場は一定の残業が発生する可能性があります。求人票の情報以外にも、職場の口コミサイトもしくは求人先で働く知人や元同僚から看護師の残業時間を確認する方法も有効です。
転職サイトで残業が少ない看護師求人を探す手間を減らしたい場合、転職エージェントの利用がおすすめです。転職エージェントでは担当者に希望条件を伝えると、該当する求人票を提示してくれます。
求人先の職場見学が可能であれば、始業時間と終業時間のスタッフの様子や職場の雰囲気を確認しましょう。求人票に加えて口コミなどで職場の実態を把握できれば、後悔せずに転職できます。
» 理想の働き方を実現する!看護師の転職を成功させるポイント
» おすすめの看護師転職エージェント5選を詳しく紹介!
看護師の残業に関するよくある質問

看護師の残業に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 看護師の残業はどのくらい許容される?
- 残業代が支払われない場合の対処法は?
看護師の残業はどのくらい許容される?
看護師の残業時間は法律で以下のように定められています。
| 原則 | 特別な事情がある場合 |
| 月:45時間 年間:360時間 | 単月の時間外労働+休日労働:100時間未満 複数月(2~6か月)の平均:80時間以内 年間の時間外労働:720時間以内 1年で6か月までしか適用不可 |
繁忙期や看護師不足などの特別な事情があれば、原則の残業時間を超えて働けます。ただし、法律で定められた残業時間を超えて働き続けると、健康を損なうリスクが高まります。月45時間を超える残業が毎月続く職場は注意しましょう。
健康への影響が深刻になる過労死ラインは月80時間を超える残業が目安です。
法律で定められた残業時間内であっても、体調を崩しそうな場合は上司に報告して残業を控えましょう。
残業代が支払われない場合の対処法は?
残業代が支払われない場合は正しい手順で職場に請求しましょう。未払いの残業代を請求するには残業したことを証明する必要があります。
以下のような証拠があれば残業したことを主張できます。
- 始業・終業時刻がわかるタイムカードや業務日報
- パソコンのログイン・ログアウト履歴
- 残業の指示がわかるメールやチャットの記録
残業した証拠がそろったら、直属の上司や人事・労務課に支払いを求めましょう。残業代が未払いである事実を冷静に伝えて話し合う点がポイントです。職場が話し合いに応じない場合、法的効力を持つ内容証明郵便(※3)で請求書を送ることも効果的です。
個人での解決が難しい場合、以下のような専門家や専門機関に相談しましょう。
| 相談場所 | 対応内容 |
| 労働基準監督署 | 労働に関するルール違反がないか調査して職場への指導を実施 |
| 弁護士 | 職場との交渉や法的な手続きを実施 |
| 労働組合(職場にある場合) | 職場との交渉を実施 |
残業代を受け取ることは労働者の正当な権利です。残業代の未払いがあれば諦めずに行動して対処しましょう。
※3 内容証明郵便とは、郵便局がいつ、誰が、誰に、どのような内容の郵便を送ったかを証明するサービスです。
看護師の残業の実態と向き合って自分に合う働き方を見つけよう

看護師の残業は多くの職場での共通課題です。看護師の残業が多い理由は以下のとおりです。
- 慢性的に看護師が不足している
- 患者の急変や即日入院の対応が多い
- 交代勤務は勤務時間の前後で対応が多い
- 看護記録や事務作業の負担が重い
- 勤務時間外の研修や会議が多い
看護師は残業が多い傾向がありますが、残業は当たり前という考えは見直しましょう。異動や転職には大きな決断が必要なため、以下の方法で今の職場の残業を減らせないか検討しましょう。
- 日々の業務の無駄な作業を減らす
- 職場で制度や仕組みを見直す
今の職場で残業が減らないなら、残業が少ない職場への異動や転職をおすすめします。転職サイトや転職エージェントを利用すれば、残業を減らしつつ看護師として働き続けられる職場に転職できる可能性があります。自分のライフステージや価値観に合わせた職場を選んで、長くいきいきと働ける看護師を目指しましょう。