看護師の離職率が低い病院の特徴とは?現状と転職成功の3つのポイント

看護師の離職率が低い病院の特徴とは?現状と転職成功の3つのポイント

看護師はやりがいのある仕事ですが、離職率が高い傾向にあります。今の職場環境に悩み、転職を考えている看護師の方も多いのではないでしょうか?この記事では看護師の離職率の現状と理由、離職率が高い病院と低い病院の特徴を解説します。

記事を読めば自分が職場に抱える不満の原因がわかり、後悔しない転職先の選び方が見えてきます。看護師として長く働くには教育体制や福利厚生が整っているなど、自分に合った環境を見極めることが大切です。

看護師の離職率の現状

2022年度調査での看護師の離職率は正規雇用看護師全体で11.6%、既卒採用者では16.8%と高い数値を示しています。看護師の離職率の現状について解説します。

病院の種類別に見る看護師の離職率

急性期病院では救急対応や手術、重症患者のケアなど業務が多忙なため看護師の離職率は高めの傾向にあります。回復期病院や慢性期病院、療養型病院では急性期に比べて看護師の業務量が落ち着いており、離職率は低めです。大学病院は専門性の高い業務や勤務のハードさから、看護師の離職率は中程度です。

地域の中小病院やクリニックでは職場ごとの特徴が色濃く、看護師の離職率にもばらつきがあります。
» 看護師の大変なことを乗り越えるには?やりがいと見直し方

病院の規模別に見る看護師の離職率

病院の規模が小さいほど看護師の離職率は高く、大規模になるほど低くなる傾向にあります。病院の規模によって教育体制や福利厚生、一人ひとりの看護師にかかる仕事の負担などが大きく変わってくるためです。日本看護協会の2022年度の調査によると、99床以下の小規模な病院の看護師の離職率は13.9%でした。

500床以上の大規模な病院では9.7%と、病院の大きさによって看護師の離職率に差があることが明らかになっています。小規模な病院は看護師一人ひとりが担当する業務の範囲が広く、負担が大きくなりやすい点が離職の原因です。大規模な病院は働き方の選択肢も多数用意されているため、長く働きやすい環境が整っています。

中規模の病院では人手不足や教育体制の課題を抱えている施設もあり、看護師の離職率は大規模な病院よりも高い傾向にあります。

地域別に見る看護師の離職率

都市部の病院ほど看護師の離職率が高く、地方は離職率が低い傾向にあります。都市部は病院の数が多く、転職先の選択肢が豊富です。より良い給料や働きやすい環境を求めて、都市部では離職する看護師が増えています。地方では病院数が限られているため、看護師は一つの職場で長くキャリアを積む傾向にあります。

日本看護協会の2022年の調査では看護師の離職率の全国平均は11.6%です。地域ごとの看護師の離職率は以下のとおりです。

  • 離職率が高い地域:東京都(15.5%)・神奈川県(14.9%)・大阪府(14.0%)
  • 離職率が低い地域:鳥取県(7.2%)・島根県(7.3%)・富山県(7.6%)

住んでいる地域が看護師の転職のしやすさに影響し、離職率の違いにつながっています。

新人看護師の離職率

新卒で入職した看護師の離職率は全体と比べても高めです。約10人に1人の新人看護師が入職後1年以内に職場を離れています。日本看護協会の調査によると2022年度に採用された新卒看護師の離職率は10.3%でした。看護師の離職率11.6%よりは少し低いものの、決して安心できる数字とは言えません。

看護師の仕事への理想と現実のギャップや厳しい労働環境が、新人看護師を離職に追い込んでいます。

看護師が離職する理由

看護師が離職する理由は以下のとおりです。

  • 人間関係の悩みがあるため
  • 勤務環境や条件に不満があるため
  • 看護師の業務がハードなため
  • 転職しやすいため
  • ライフスタイルが変化したため

人間関係の悩みがあるため

職場の人間関係の悩みは看護師が離職する理由の一つです。命を預かる現場ではスタッフ同士の協力が欠かせません。人間関係がうまくいかないと精神的な負担が大きくなり、離職につながります。看護の仕事は心身ともに大きなストレスがかかるため、職場の人間関係が悪いと孤立しやすくなります。

協力体制のない職場環境は働く意欲を失わせる大きな原因です。以下の人間関係の悩みが看護師の離職の原因として挙げられます。

  • パワハラやいじめ
  • 派閥や協力体制の欠如
  • 他職種との連携不足
  • ベテラン看護師との関係悪化
  • 患者・家族からのクレーム
  • 閉鎖的な職場の雰囲気

職場の人間関係は看護師の仕事のやりがいや満足度に直結します。

勤務環境や条件に不満があるため

勤務環境や労働条件への不満も看護師が離職を考える理由の一つです。給与や休日、労働時間といった条件は仕事へのモチベーションに影響します。仕事に見合った対価が得られなかったり十分な休息が取れなかったりすると、職場への不満は溜まりやすくなります。

心と体の健康が保てず、ワークライフバランスが取りにくい職場環境が多くの看護師を離職の一因となっています。
» 看護師の休み、実際どう?年間休日と有給のリアル

看護師の業務がハードなため

業務が心身ともにハードである点も、看護師が離職を考えるきっかけになります。看護師は人の命を預かる責任の重い仕事です。夜勤がある不規則なシフトで生活リズムが崩れやすくなります。急な患者の対応で残業が多くなる傾向にあります。

看護師は看護の仕事以外にも記録や会議などの業務をこなさなければなりません。立ち仕事が多い看護師の業務に疲弊する方も多くいます。新しい医療技術について常に勉強しなければいけない点も看護師の業務がハードに感じる要因です。

さまざまな負担が積み重なることで心と体のバランスを崩してしまい、離職してしまう看護師が多くいます。

転職しやすいため

看護師は転職しやすい環境にある点も離職を決断する理由の一つです。看護師は国家資格であるため、全国どこでも働く場所を見つけやすい傾向にあります。医療業界は常に人手が足りておらず、求人が豊富にある点も看護師の転職のしやすさにつながっています。

看護師としての臨床経験はキャリアとして評価されるため、より良い条件の職場へ移ることも可能です。いつでも次の職場を見つけられる安心感が、現在の職場を離れる決断を後押しする場合があります。
» 理想の働き方を実現する!看護師の転職を成功させるポイント
» 看護師が働きながら転職活動をする方法を紹介!

ライフスタイルが変化したため

ライフスタイルの変化は看護師が離職を考えるきっかけになります。結婚や出産、子育て、親の介護といった人生の節目を迎えると、今までと同じ働き方を続けることが難しくなるためです。結婚を機に家庭と仕事を両立できる働き方に変えたり、妊娠や出産を経て夜勤のない職場や時短勤務を希望したりします。

子育てのために院内託児所がある病院や休暇の取りやすい職場を探すケースもあります。親の介護のために勤務時間を調整できる職場に移ったり、心身への負担が少ない働き方を求めたりと離職の理由はさまざまです。パートナーの転勤により転職を余儀なくされるケースもあります。
» 看護師を辞めたいと感じる原因と対処法を紹介

看護師の離職率が高い病院の特徴

看護師の離職率が高い病院の特徴は以下のとおりです。

  • 小規模で人手不足が常態化している
  • 教育・研修体制が整っていない
  • 管理職や上司のサポートがない
  • 評価が曖昧で頑張りが報われない

小規模で人手不足が常態化している

小規模な病院やクリニックでは人手不足が常態化しているため、看護師の離職率が高くなる傾向にあります。職員一人ひとりにかかる負担が重く、職員が心身ともに疲弊してしまうためです。職員数が少ないと一人当たりの業務量が必然的に多くなります。

急な欠員が出た場合、残ったスタッフで業務を分担しなければならず、負担が大きくなる場合があります。人手不足が深刻な状況では有給休暇や希望休の取得が難しくなり、プライベートの時間を確保できません。人手が足りない職場では業務や責任の偏りが出てしまいます。

教育・研修体制が整っていない

教育や研修体制が整っていない病院は看護師の離職率が高くなる傾向にあります。新しい知識や技術を学ぶ機会がなく、困ったときの相談相手がいないと看護師は大きな不安を抱えて働かなければなりません。プリセプター制度が名ばかりであったり中途採用者への研修が不十分だったりすると、業務への不安は増すばかりです。

院内外の研修に参加する機会が乏しいと仕事へのモチベーションの維持が難しくなります。仕事でミスが起きた際に個人を責めるだけで組織として改善しようとしない職場も要注意です。教育や研修体制が整っていない職場では日々の業務に対する不安が解消されず、安心して働き続けることが困難になります。

管理職や上司のサポートがない

管理職や上司からの適切なサポートが受けられない職場も看護師の離職率が高くなる傾向にあります。日々の業務で困りごとやトラブルがあった際に、頼れるはずの上司が助けてくれないとスタッフは安心して働けません。以下の状況が看護師の離職の引き金になる場合があります。

  • 業務量の偏りを放置される
  • キャリアプランへの関心がない
  • 上司がシフト調整に応じてくれない
  • 高圧的・感情的な叱責を受ける

管理職が職員を守り、支える役割を果たしていない職場では、看護師は心身ともに疲弊します。心身ともに疲弊した看護師は安心して働ける環境を求めて離職を選びます。

評価が曖昧で頑張りが報われない

評価基準が明確でない職場では自分の頑張りが正当に評価されず、働くモチベーションが下がる原因になります。評価が上司の個人的な感情で左右される職場では、真面目に働いても正当に評価されにくくなります。

仕事量や責任の重さが給与に反映されず、資格取得などのスキルアップが評価に影響しない場合も離職につながる要因です。頑張りを認めてもらえない環境ではやりがいを感じられず、離職する看護師が増加します。
» 【職場別】看護師がやりがいを感じる瞬間を解説

看護師の離職率が低い病院の特徴

看護師の離職率が低い病院の特徴は以下のとおりです。

  • 福利厚生が充実している
  • 教育体制や研修制度が整っている
  • 職場の雰囲気が良い

福利厚生が充実している

福利厚生が充実している病院は看護師が安心して長く働けるため、離職率が低い傾向にあります。経済的なサポートやプライベートを充実させる制度が、仕事への満足度やモチベーションを高めるためです。看護師の離職率の低い病院には以下の福利厚生が整っている場合が多く見られます。

  • 住宅手当・看護師寮
  • 24時間対応の院内保育所
  • 産休・育休制度や時短勤務
  • 年間休日120日以上
  • 資格取得の支援
  • 職員食堂
  • 退職金制度
  • リフレッシュ休暇

職場の手厚いサポート体制は看護師が心身ともに健康で働き続けるために必要です。職員一人ひとりを大切にする職場の姿勢が、定着率の高さに表れます。

教育体制や研修制度が整っている

離職率が低い病院は看護師一人ひとりの成長を支える教育や研修制度が充実しています。新人やベテラン、ブランクのある方など、それぞれの経験や目標に合わせてスキルアップできる環境が整っているためです。看護師の離職率が低い病院は以下のサポート体制が整っている場合が多く見られます。

  • 新人看護師に先輩がマンツーマンで指導するプリセプター制度
  • 経験や目標に合わせた段階的な研修(キャリアラダー)
  • ブランクのある看護師が安心して復帰できる支援研修
  • スマートフォンやパソコンで学べるeラーニングの導入
  • リーダーや管理職を目指すためのキャリアアップ研修

認定看護師などの資格取得にかかる費用の補助や研修日を勤務扱いにしてくれる病院もあります。安心してスキルアップを図れる職場の体制は仕事への自信とやりがいにつながります。

職場の雰囲気が良い

職場の雰囲気が良いことは看護師が長く働くために欠かせない要素です。職員同士がお互いを尊重して協力し合える職場では安心して働くことが可能です。良い雰囲気の職場では人間関係のストレスが少なく、仕事に集中できます。

離職率の低い病院では職員同士の円滑な意思疎通が行われており、上司のサポートもしっかりしています。お互いを思いやる文化が浸透している職場では看護師が能力を存分に発揮でき、安心して働き続けることが可能です。

看護師が転職を考える際のポイント

看護師が転職を考える際のポイントは以下のとおりです。

  • 転職の目的と条件を明確にする
  • 職場の先輩や同僚に相談する
  • 働きやすい職場を探す

転職の目的と条件を明確にする

看護師が転職を成功させるには転職の目的と転職先に求める条件を明確にしましょう。目的や条件が曖昧なまま転職活動を始めると転職後のミスマッチにつながります。以下の点を紙に書き出すと自分の気持ちを整理できます。

  • 転職理由・不満点
  • 希望条件の優先順位
  • 譲れない条件
  • 希望の働き方
  • キャリアプラン

自分の希望を「見える化」すると本当に自分に合った職場が見つけやすくなり、転職後のミスマッチを防げます。

職場の先輩や同僚に相談する

看護師が転職を検討する際は一人で悩まずに、信頼できる職場の先輩や同僚に相談しましょう。先輩や同僚から客観的な意見をもらうと自分の状況を冷静に見つめ直せます。転職を経験した先輩がいれば、実体験にもとづいた貴重な話を聞ける可能性があります。

相談する際は愚痴だけでなく、前向きな話もするよう心がけましょう。相談相手の意見を参考にしつつ、最終的な決断は自分で行います。信頼できる人に相談することで気持ちが楽になったり新しい視点を得られたりします。

働きやすい職場を探す

看護師が働きやすい職場を見つけるには求人票の情報だけを信じるのではなく、職場内部のリアルな情報を集めましょう。転職活動を行う際は転職エージェントへの登録がおすすめです。転職エージェントに登録すると離職率や残業時間といった内部情報を教えてもらえます。

看護師専門の口コミサイトで元職員の意見を参考にすることも、働きやすい職場を見極める方法の一つです。病院見学を申し込み、看護師の表情や職場の雰囲気を自分の目で確かめる方法もあります。職場の面接で平均残業時間や有給休暇の取得率、子育て支援制度の利用実績を具体的に質問しましょう。

複数の方法を組み合わせて多角的に情報を集めると、自分にとって働きやすい職場かどうかを判断しやすくなります。

看護師として長く働ける職場を選ぼう

看護師として長く活躍するには自分に合った職場選びが重要です。自分のキャリアプランを明確にし、転職エージェントを活用すると自分に最適な職場を見つけやすくなります。小規模で常に人手不足の病院や教育・研修体制が整っていない病院は、看護師の離職率が高い傾向にあるため注意が必要です。

福利厚生が充実していて職場の雰囲気が良い病院は看護師の離職率が低く、安心して働けます。転職エージェントや口コミからの情報を自分の希望と照らし合わせると、やりがいを持って働ける環境が見つかります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA