看護師と保健師の違いとは?仕事内容・年収・キャリアプランを徹底比較

看護師と保健師の違いとは?仕事内容・年収・キャリアプランを徹底比較
  • 保健師に興味があるけど、看護師との違いがわからない
  • 将来のキャリアとして考えている保健師の給料や働き方に不安を感じる
  • 看護師から保健師になる方法は?

心身への負担が大きい看護師として働く中で、保健師に興味を持つ方は多いのではないでしょうか?しかし、看護師と保健師の違いを知らずにキャリアチェンジをすると、理想とのギャップで後悔してしまうかもしれません。

この記事では看護師と保健師の役割や給与、キャリアプランなどの違いを解説します。記事を読めば看護師と保健師の違いが明確になり、キャリアプランを描きやすくなります。

看護師の役割は病気やけがの治療の支援で、保健師の役割は病気の予防が中心です。看護師は夜勤や残業が多いのに対し、保健師は日勤が中心のためワークライフバランスを取りやすい特徴があります。看護師と保健師の違いを正しく理解し、理想の働き方に合ったキャリアを選択しましょう。

看護師と保健師の役割や仕事内容の違い

看護師と保健師はどちらも健康に関わる専門職ですが、役割や仕事内容に違いがあります。看護師と保健師の役割や仕事内容の違いについて詳しく解説します。

看護師の役割と仕事内容

看護師の主な役割は病気やけがで苦しむ患者の心と体に寄り添い、回復を助けることです。看護師の主な仕事内容は「診療の補助」と「療養上の世話」にわかれており、具体的には以下のとおりです。

  • 医療行為
  • 手術の準備・介助
  • 医療機器の管理
  • 看護記録の作成・情報共有
  • 患者への病状説明・生活指導
  • 患者の日常生活の援助
  • 患者の精神的なケア
  • 患者の健康状態の把握

看護師は医療行為から患者の日常生活のサポートまで幅広く担当します。患者が治療に専念してもとの生活に戻るには、医師の治療と看護師による専門的なケアが欠かせません。

看護師は専門的な知識とスキルを駆使して、患者に最も近い立場で医療現場を支える役割を担っています。
» 看護師の仕事内容|勤務先や給与もまとめてチェック!

保健師の役割と仕事内容

保健師の主な役割は人々の病気を予防し、心も体も健康な生活を送れるように支援することです。病気やけがの治療の支援が中心の看護師とは違い、保健師は健康な人々にも援助を実施します。

保健師の仕事内容は多岐にわたりますが、主な業務は以下のとおりです。

  • 健康相談や保健指導
  • セミナーや教室の企画・実施
  • 家庭や職場への訪問
  • 各種事業の運営
  • 健康診断やストレスチェック対応
  • 感染症の予防・拡大防止

保健師は一人ひとりの健康相談から地域全体の健康づくりまで、人々に寄り添いながら健康を守り育てる仕事を担当しています。

看護師と保健師に求められるスキルの違い

看護師と保健師に求められるスキルの違いについて詳しく解説します。

看護師に求められるスキル

看護師には患者の命と健康を守る専門的なスキルとコミュニケーション能力が必要です。患者の体調は常に変化するため、看護師は医師や他のスタッフとの連携が欠かせません。

患者の体と心をケアするために看護師に求められるスキルは以下のとおりです。

  • 患者の小さな変化に気づく観察力
  • 採血や点滴などの基本的な看護技術
  • 患者の急な体調変化にも冷静に対応する判断力
  • 医師や同僚とスムーズに情報共有する力
  • 患者や家族の不安な気持ちに寄り添う心
  • 夜勤や緊急事態に対応できる体力と精神力
  • 人の命を預かる強い責任感

患者から信頼される看護師になるには、観察力や判断力などのスキルを総合的に身に付ける必要があります。

保健師に求められるスキル

人々の病気を予防して健康な生活をサポートするスキルが保健師に求められます。保健師は一人ひとりの相談に乗るだけでなく、地域や組織など集団の健康課題を解決する力が必要な点が看護師との大きな違いです。

保健師には以下のようなスキルが求められます。

  • コミュニケーション能力
  • アセスメント能力
  • 企画・立案能力
  • 調整能力
  • 指導力
  • パソコンスキルと事務処理能力
  • 自己管理能力

看護師としての実務経験だけでなく、人々の健康を守るための広い視点が保健師には欠かせません。

看護師と保健師の勤務先や勤務体制の違い

看護師と保健師の勤務先や勤務体制の違いについて詳しく解説します。

看護師の主な勤務先と勤務体制

看護師の働き方は勤務先によって大きく異なり、24時間体制の職場も多い点が特徴です。

看護師の主な勤務先と勤務体制は以下のとおりです。

看護師の勤務先勤務体制
病院(大学病院、総合病院など)24時間体制
夜勤を含むシフト勤務
クリニック・診療所日勤
訪問看護ステーション日勤
夜間や休日に緊急対応を求められるオンコール体制
介護施設24時間体制
夜勤を含むシフト勤務
企業(産業看護師)平日の日勤
カレンダーどおりの休日
美容クリニック日勤
土日祝日を含むシフト勤務

看護師は自分の希望するライフスタイルやキャリアプランに合わせて勤務先を選べます。
» 看護師の働き方を職場や雇用形態別に徹底解説!

保健師の主な勤務先と勤務体制

保健師と看護師の違いは規則的な生活の送りやすさです。保健師は日勤が中心で土日祝日が休日のため、ワークライフバランスを重視する方に適しています。

保健師の主な勤務先は以下のとおりです。

  • 行政:保健所や保健センター
  • 企業:健康管理室や医務室
  • 学校:保健室
  • 医療機関:病院や健診センター

職場や時期によって違いますが、保健師の残業時間は比較的少ない傾向にあります。ただし、行政保健師は地域のイベントや災害時対応で休日出勤や時間外労働が発生することもあります。

看護師と保健師の給与や年収の違い

看護師と保健師の給与や年収の違いについて詳しく解説します。

看護師の給与と年収事情

看護師の平均年収は約508万円(平均月収約35万円、ボーナス約86万円)です。ただし、看護師の給与にはさまざまな手当が加わるため、経験年数や働き方によって年収が大きく変わります。

看護師が給与を増やす方法は以下のとおりです。

  • 夜勤をする
  • 規模が大きい大学病院などで勤務する
  • 美容クリニックや訪問看護ステーションで勤務する
  • 給与水準の高い首都圏や大都市で勤務する
  • 役職手当がもらえる主任や看護師長などに就く
  • 専門看護師や認定看護師の資格を取る

看護師の夜勤手当は1回当たり平均1〜1.5万円が相場です。給与が高い勤務先で働いたり資格の取得などでキャリアアップしたりすると、看護師の給与を増やせます。
» 看護師の平均年収や給与を上げる方法・年収が高い職場を徹底解説!

保健師の給与と年収事情

厚生労働省の調査によると、保健師の平均年収は約480万円です。保健師は日勤が中心のため、夜勤がある看護師よりも年収は低くなる傾向があります。

保健師の勤務先は行政から民間までさまざまであり、勤務先によって給与が異なります。市役所や保健所などで働く行政保健師の給与は、地方公務員の給与規定に沿っているため安定的です。一般企業で働く産業保健師の給与は会社の規模や業績によって変動します。大企業に勤める保健師は高年収の可能性もあります。

保健師の給与は基本給が中心で、夜勤手当などの特別手当が少ない点が看護師との違いです。経験年数や役職に応じて保健師の給与は上がりますが、大幅な昇給はあまり期待できません。

看護師と保健師のキャリアプランの違い

看護師と保健師のキャリアプランの違いについて詳しく解説します。

看護師のキャリアプラン

看護師のキャリアプランは多彩で、自分の興味や目標に合わせてさまざまな道を選べます。臨床現場で培った看護師の知識や経験は医療機関だけでなく、教育や一般企業などの幅広い分野で評価されます。

看護師が選べるキャリアプランは以下のとおりです。

  • 認定看護師・専門看護師
  • 管理職
  • 看護教員・研究者
  • 助産師やケアマネジャーなどの関連資格を取得
  • 病院以外の施設
  • 一般企業

看護師には専門性を高める以外に、ジェネラリスト(※1)として幅広い分野で経験を積む選択肢もあります。関連資格を取得して仕事の幅を広げたり、治験コーディネーター(※2)として一般企業で勤務したりする方法もジェネラリストの一つです。

ライフステージの変化に応じて柔軟に働き方を変えたい方には看護師が向いています。
» 認定看護師になるための流れや注意点、費用を解説
» 専門看護師を目指す前に知っておきたいメリットと2つの条件
» 介護施設で働く看護師の仕事内容や求められる能力を解説
» 産業看護師になるには?仕事内容や向いている人の特徴を紹介

※1 ジェネラリストとは、特定の専門分野に特化せず、幅広い分野や状況に対応する看護師のことです。
※2 治験コーディネーターとは、治験に関するスケジュール調整や説明、書類作成などの調整役を担う専門スタッフのことです。

保健師のキャリアプラン

保健師は経験を積むことでさまざまな道に進めます。保健師のキャリアプランは以下のとおりです。

保健師の勤務先キャリアプラン
行政機関係長や課長などの管理職に就く
企業(産業保健師)実績を重ねてより大きな企業へ転職する
学校主任や主幹教諭などの役職に就く
大学院(進学)特定の分野を深く研究して研究者や教育者になる
フリーランスセミナー講師や健康相談を行う
国際協力機関海外の公衆衛生分野で活躍する

看護師と同様に、保健師の専門性を活かせば多方面で活躍できます。特に予防医療や公衆衛生といった専門分野を深めると、キャリアの選択肢が更に広がります。

看護師から保健師へのキャリアチェンジの道のり

看護師から保健師へのキャリアチェンジの道のりは以下のとおりです。

  • 保健師になるために必要な教育課程を受ける
  • 保健師国家試験に合格する
  • 自分の希望に合う求人を探す

保健師になるために必要な教育課程を受ける

看護師から保健師になるには専門的な教育課程を修了し、国家試験の受験資格を得る必要があります。保健師の教育課程を受ける方法は以下のとおりです。

  • 1年制の保健師養成所に通う
  • 保健師養成課程のある4年制大学に通う
  • 大学院で公衆衛生看護学を専攻する

現役の看護学生であれば看護師課程と保健師課程を同時に学ぶ方法もあります。学校で決められた単位を取得すると、保健師国家試験の受験資格を得られます。

保健師国家試験に合格する

保健師になるには毎年2月中旬頃に実施される保健師国家試験に合格する必要があります。保健師国家試験の合格率は80~90%台と高い水準ですが、十分な試験対策が必要です。

保健師国家試験で出題される科目は以下のとおりです。

  • 公衆衛生看護学
  • 疫学
  • 保健統計学
  • 保健医療福祉行政論

保健師国家試験の過去問を最低3〜5年分繰り返し解くと出題傾向や時間配分に慣れ、出題内容を効率的に学べます。保健師国家試験の過去問だけでなく、法改正や最新の統計情報も正確に把握しましょう。

法律や制度に関する問題は参考書や白書を用いて最新情報を確認しましょう。知識を定着させるには多くの参考書を利用するより、自分に合った1冊を完璧に理解する方が効率的です。全国模試を定期的に受けて自分の苦手分野を把握し、集中的に復習することも大切です。

保健師国家試験に合格するには計画的な学習が欠かせません。

自分の希望に合う求人を探す

保健師国家試験に合格した後は自分に合う求人を探しましょう。理想の保健師の職場を見つけるには希望条件を明確にする必要があります。保健師はさまざまな働き方を選べるため、自分の希望を整理せずに求人を見つけることは困難です。

保健師の求人を探す前に整理しておくと良い希望条件は以下のとおりです。

希望条件内容
働きたい分野勤務先(行政や産業、学校など)
希望の働き方日勤のみ、土日祝が休日などの勤務形態
やりたい仕事内容健康相談やメンタルヘルス対策など
給与や福利厚生給与に加えて住宅手当や資格手当などの各種手当

保健師の求人は看護師・保健師専門の転職サイトやエージェントを複数利用して探しましょう。行政保健師を目指す場合は各自治体のホームページ、産業保健師であれば企業の採用ページもこまめに確認しましょう。保健師未経験で不安な方は「未経験者歓迎」や「研修制度あり」と記載がある求人がおすすめです。

看護師と保健師で働くメリット・デメリットの違い

看護師と保健師で働くメリット・デメリットの違いについて詳しく解説します。

看護師として働くメリット・デメリット

看護師には給与の安定性や社会貢献といったメリットがある一方で、心身への負担が大きいといったデメリットもあります。看護師として働くメリットは以下のとおりです。

  • 全国的に需要が高くて就職先や転職先が豊富
  • 景気に左右されにくい安定した収入
  • 専門性を活かして人の命を救えるやりがい
  • 専門看護師や認定看護師などキャリアアップの選択肢が豊富

看護師はやりがいが大きい反面、以下のようなデメリットもあります。

  • 夜勤や交代制勤務により生活リズムが不規則になりやすい
  • 立ち仕事や患者の介助など身体的な負担が大きい
  • 人の命を預かるプレッシャーや精神的なストレスがかかりやすい
  • 残業が多く休日も不規則でプライベートとの両立が難しい

患者と向き合える仕事に就きたい方は看護師が向いています。
» 【職場別】看護師がやりがいを感じる瞬間を解説
» 看護師の大変なことを乗り越えるには?やりがいと見直し方

保健師として働くメリット・デメリット

保健師はプライベートを大切にしながら安定して働ける一方で、給与面や仕事内容にデメリットを感じる場合があります。保健師として働くメリットは以下のとおりです。

  • 日勤で土日祝日が休日の職場が多く、生活リズムを整えられる
  • 夜勤がないため身体的な負担が少なく、長く健康に働ける
  • 行政保健師は公務員として安定した雇用と福利厚生が得られる
  • 病気の予防や健康づくりによって多くの人の健康に貢献できる
  • デスクワークや相談業務が中心で看護師とは違うスキルが身に付く

保健師は心と体のゆとりを持って長く働き続けやすい仕事です。一方で、看護師から保健師にキャリアチェンジするデメリットは以下のとおりです。

  • 夜勤手当がなく看護師より給与が下がりやすい
  • 求人の数が少ないため希望の職場を見つけることが難しい
  • 採血や点滴などの医療処置の機会が少なくなり、臨床スキルが下がりやすい
  • 地道な調整や事務作業にやりがいを感じにくい
  • 地域住民や従業員からの相談やクレーム対応などで精神的に疲れやすい

保健師はワークライフバランスを重視したい方や病気の予防に関心がある方にとって魅力的な仕事です。保健師への転職を考える際は看護師との違いを理解し、自分のキャリアプランに合っているか見極めましょう。

看護師と保健師の違いを理解し、理想の働き方を選ぼう

看護師は病気やけがの治療を支援する一方で、保健師は予防活動に重点を置いている点に大きな違いがあります。高度な医療知識を活かして患者をケアしたいなら看護師が、地域全体の健康づくりや日勤中心のワークライフバランスを重視するなら保健師が適しています。

看護師から保健師にキャリアチェンジする手順は以下のとおりです。

  1. 保健師になるために必要な教育課程を受ける
  2. 保健師国家試験に合格する
  3. 自分の希望に合う求人を探す

理想の働き方を選ぶためにも看護師と保健師の違いを理解して、自分の価値観や将来のライフプランに合うキャリアを見極めましょう。

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